認知的不協和とは自分の中でつじつまの合わないことに不快感を覚える心理作用です。
認知的不協和という、「矛盾からくる不快感」を解消するための方法をすっぱいぶどうと甘いレモンの例も含めて解説します!恋愛やマーケティング、教育での活用方法も解説します!
認知的不協和とは?
認知的不協和とは、「新しい事実」が突きつけられることで、その事実と自分の行動・信念が矛盾するという不快感が発生することです。 人はそれを解消するために「新しい事実」か自分の行動・信念のどちらかを変えようとします。 フェスティンガーというアメリカの心理学者によって提唱された理論です。認知的不協和理論とも言います。
認知的不協和を解消・回避するには?
人は認知的不協和を抱えると、「矛盾を無くして安心し、自分を肯定できる状態にする」ために認知的不協和状態を解消したりその状態を回避しようとします。 そして、認知的不協和を解消・回避するためには、ここまで例で見てきたように、 「新しい事実を否定する」か「自分の行動や信念を変える」ことが良い方法です。 認知的不協和の解消法の有名な具体例として ①すっぱいぶどう②甘いレモン の二つがあるので見ていきましょう。
認知的不協和の解消・回避法①すっぱいぶどう
「すっぱいぶどう」とは、手に入らなかったものを否定することによって「欲しいのに手に入っていない」という認知的不協和を解消するという心理法則です。 イソップ物語の「狐と葡萄(きつねとぶどう)」という物語にちなんでいます。
キツネが木においしそうなブドウが実っているのを見つけました。 食べようとして跳び上がりましたが、場所が高くて届きませんでした。 結局、このブドウは酸っぱくてまずいのだろうと正当化した、という話です。
すっぱいぶどうと似た具体例(1)不合格だった志望校
受験で志望校に不合格だったとします。 「行きたかった志望校に合格できなかった」という認知的不協和を解消するために、「あの学校は勉強ばかりさせられるし実はそんなにいい学校ではないのだ」と欠点を考えて正当化することがあります。
すっぱいぶどうと似た具体例(2)付き合えなかった憧れの男の子
どうしても好きで付き合いたかった憧れの男の子がいたとします。 その人に告白したが振られてしまいました。 「付き合いたいのに付き合えていない」という認知的不協和を解消するために、「あの男の子はチャラチャラしているし付き合っても大事にしてくれない」と正当化することがあります。
認知的不協和の解消・回避法②甘いレモン
「甘いレモン」とは、自分が手に入れたものの価値を高く感じようとする心理法則です。 例えば、ミカンなど甘い果物が手に入らずレモンだけが手に入ったという状況で、「このレモンは甘い」と思い込もうとすることです。 手に入れたものの価値を高めることで「手に入っているもので満足」し、欲しいのに手に入っていないものがあるという認知的不協和を解消します。
甘いレモンと似た具体例(1)わがままな彼女
何度も何度もアプローチして付き合えた彼女がいたとします。 その彼女と一緒に暮らしてみると、全く家事はやってくれません。 それでも「こんなに自分に対して素で接してくれる人はいない、落ち着く人だなあ」と彼女の価値を高めようとする心理作用が働きます。
甘いレモンと似た具体例(2)ブラック企業を辞められない
勤めている企業が残業の多いブラック企業であるとします。 辞めたいと思いますが、上司に相談したところ怒鳴られて説得され、辞められそうにありません。 この時、今の会社にもいいところはある、と合理化して「辞めたいけど辞められない」という認知的不協和を解消したりします。
認知的不協和の活用方法
ここからは認知的不協和を様々な場面で活用する方法について見ていきましょう。
認知的不協和の活用方法(恋愛編)
相手に何かをしてもらう
人は大事な人に対して親切な行動を取ります。 これを逆に利用して「相手に何かをしてもらう」というのは恋愛において有効でしょう。 特にその「何か」が「恋人にするようなこと」であればあるほど有効です。 例えば高いところの物を取ってもらったり、物を借りたり、料理を作ってもらったり、です。 すると相手の中で「親切な行動をしているのに親密な関係ではない」という認知的不協和が生じ、親切な行動をしているということは好きということなのではないかという心の動きをする可能性があります。
何気ないデートをする
好意を伝えなくとも、何気なく二人で買い物に行く機会をもうけたり、ご飯に行く機会をもうけたりすることは有効でしょう。 なぜなら「付き合っているわけではないのにデートをしている」という矛盾が相手の中に生まれ、「好きなのかもしれない」という心の動きをする可能性があるからです。
認知的不協和の活用方法(マーケティング編)
コピーライティングで活用することが考えられます。 矛盾する表現を掛け合わせることによって、読んでいる人の頭の中に認知的不協和を引き起こすことができ、結果的に気になってしまうのです。 例えば 「食べて痩せよう!」(え、食べたのに痩せられるの?) 「寝ながら学習」(え、寝ながら学習できるの?) 「無視してオトす」(え、無視したら嫌われない?) というように矛盾した表現が認知的不協和を生み出し、注目を集めます。
認知的不協和の活用方法(教育での褒め方編)
例えば子供がテストで悪い点を取った時のことです。 「〇〇君は頭がいいから大丈夫、大したことじゃないよ」と伝えると、子供の中で「自分は頭がいいのにテストの点数が悪かった」という認知的不協和が生じ、次のテストを頑張る可能性が高くなることが考えられます。 ただし何度も悪い点を取るたびに「〇〇君は頭いいから大丈夫だよ」と言うなど子供へのプレッシャーを強くしてしまうと、認知的不協和解消の方向性として「自分が頭が悪いからできないのだ」と思ってしまう可能性があるので注意が必要です。
認知的不協和活用の際のポイント
ここまで人が認知的不協和を解消したくなることを利用した、認知的不協和の活用方法を見てきましたが、ここには重要なポイントがあります。 人は「変えたくない方や変えづらい方を合理化する傾向にある」 ということです。 例えばわがままな彼女がいる人は、彼女と別れたくないために、「わがままである彼女」を合理化することによって認知的不協和を解消しようとする傾向が強くなるでしょう。 現状維持バイアスという「人は変化を好まない」という心理とも関わっていると言えるでしょう。
認知的不協和は生きていく上で重要
人は自己の中に矛盾を抱えられないものです。 矛盾があると安心できませんし、自分を肯定することもしづらくなってしまいます。 認知的不協和という心理作用があることによって自分の人生の選択を合理化し、幸せに生きていけるとも言えるでしょう。
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