心理的リアクタンスとは個人の行動の自由を妨げるような人やことがらに対して反発したり、いやな気持ちになったりするような心理状態です。
心理的リアクタンスと同じくよく引用される心理的現象のカリギュラ効果についても掘り下げていきます。
心理的リアクタンスとは?
心理的リアクタンスとは、個人の行動の自由を妨げるような人やことがらに対して反発したり、嫌な気持ちになったりするような心理状態です。 イメージしやすいのは天邪鬼(あまのじゃく)という言葉でしょう。言われたことに対して反発したり逆のことをしようとするのは、心理的リアクタンスの代表例です。 心理的リアクタンスは1966年にアメリカの心理学者ジャック・ブレーム(Jack Brehm)が提唱した理論に由来するものです。
心理的リアクタンスの具体例
私たちは日常生活の中で、心理的リアクタンスが原因となる行動を沢山とっています。一体どのような具体例があるでしょうか。
これからやろうと思っていたのに「やりなさい」と言われた時
子供の時に「お部屋のおそうじしなさい。」とお母さんに言われた時、ムカつくことはありませんでしたか?「これからやろうと思っていたのに!」と腹が立ったりしたと思います。 部屋の掃除を強制されたことで、逆にそのやる気が失せてしまうのは、心理的リアクタンスが原因です。
押しつけがましい上司
仕事を頑張ろうと思ってたところに、上司に高圧的な態度で「早くこの仕事をやれ!」と言われると逆にやる気を失いますよね。このように押しつけがましくされたことで逆に萎えてしまうのも、心理的リアクタンスの表れでしょう。
心理的リアクタンスの実験
このように、私たちの日常生活の中にも現れる心理学リアクタンス。それを実証した実験があるのでご紹介します。
手助けするとますます嫌いな野菜を食べなくなる?
心理学的リアクタンスを初めて提唱したブレームは、子供たちに嫌いな野菜を食べてもらう実験をしました。 その結果から、好き嫌いを無くすよう無くすよう手助けすればするほど、嫌いなものに対する抵抗感は大きくなるとされています。手助けに反発する心理がはたらき、ますます野菜を食べる気が失せてしまったということです。
意見をかえるかどうかの心理実験
アメリカのHP社(Hewlett-Packard)の実験によると、人は大勢の人たちが自分の意見に反対すればするほど、ますます自分の意見に固執して意見をかえない傾向があるという結果が出ています。 人は自分の考えが反対されると、心理的リアクタンスによる反発心から、その考えに固執する傾向がある、ということです。
心理的リアクタンスに関連する心理学用語
心理学リアクタンスに関する心理学用語を紹介します。
カリギュラ効果
カリギュラ効果とは、禁止されるほどやってみたくなる心理現象のことをいいます。【閲覧禁止】を書いてある記事って、気になって読みたくなってしまいますよね。 カリギュラ効果の名前の由来は、ローマ帝国の皇帝カリギュラをモデルにした1980年のアメリカ・イタリア合作映画『カリギュラ』からきています。 この映画は、内容が過激であるがゆえに、上映禁止になるところが相次ぎました。 ところが、禁止されたことで逆に大衆の興味の的になり、当時大きな話題となった映画です。
ブーメラン効果
ブーメラン効果は、人を説得しようとして、かえって相手の反発や抵抗を招いてしまうという効果のことです。 説得される側としては、説得者の言うことを聞くことで自分の意思決定の自由を脅かされてしまうため、無意識に反発をしてしまいます。
希少性の原理
希少性の原理は、ものの数量や期間、地域などが限定されることによって、その希少性が生じてその希少価値が出てくる原理のことです。 数や時間が限定されることによって、それを手に入れることの出来る自由が拘束される、制限される、ということへの反発心からくる心理的リアクタンスが原因となっているとも言えます。
ロミオとジュリエット効果
ロミオとジュリエット効果とは、反対されればされるほど愛が盛り上がる効果のことです。シェイクスピアの有名な戯曲ロミオとジュリエットから由来します。 この効果は恋愛に限りません。目標があるとき、障害があるとかえって目標達成の意欲が高まる心理をロミオとジュリエット効果と呼ぶこともあります。
心理的リアクタンスの活用法【仕事編】
心理的リアクタンスを理解すれば、様々な場面で応用可能です。ここでは仕事で活用する方法を考えてみましょう。
マーケティングに活かす
強制されたり禁止されるとその逆の行動を取りたくなる心理は、マーケティングで活用することができます。 例えば商品の販売数を伸ばしたい時に「〇〇の方は買わないでください」などと、禁止を含む宣伝を行うと、逆に木になる心理がはたらき購買数を伸ばすことができます。
営業に活かす
営業においては、売り込み方に注意する必要があります。売らなければと焦り、一方的に売り込んでしまえば、顧客は反発の心理で購入から遠ざかってしまいます。「押し売りは結構ですので」と門前払いされてしまっては商品は売れません。 営業において大事なことは、顧客の判断の自由を尊重しながら、交渉していくことです。無理に売りつけずにまずは商品のことをよく知ってもらうようにすることで、心理的リアクタンスの発動を防ぐことができます。
心理的リアクタンスは恋愛にも使える
心理的リアクタンスは、恋愛でも活用することができます。その方法を見ていきましょう。
相手を振り向かせたい時
気になる人と二人きりでデートしている時、こちらの想いや考えをあまりに押しつけようとすると、相手は遠ざかってしまものです。相手にも選択の自由があるのだと、常に理解してあげることが重要です。 自分の想いが強ければ強いほど、相手の反発を招いてしまわないように、しっかりとこれを認識しておく必要があるでしょう。
ずっと一緒でいたいときは
あの人とまだ一緒にいたい。まだ別れたくない。なのにあの人の心はますます遠のいていくような時ってありますよね。それも心理的リアクタンスの1つでしょう。 「別れたくない」「昔の関係に戻りたい」などとあまりに繰り返して言われると、相手は逆に煙たがって距離をおこうとします。無理に説得しようとするのではなく、時には表現法を変えてみたり、一旦距離を置いてしまうのも反発心を助長しない一つの方法です。
心理的リアクタンスは子育てにも使える?
子供と接するときも、心理的リアクタンスを常に念頭においておく必要があります。こどもとはいっても、本人の選択の自由は尊重してあげることが大切です。 できるだけ心理的リアクタンスを抑える工夫をしましょう。子供に何かを強要するのではなく、相手の自由や自立性を制限することなく、あくまで自主的に行動を促してあげるのです。 本人が「しなければならない」ではなく、「したい」「してみよう」という気持ちを持てるよう変えていくわけです。
心理的リアクタンスを回避するには?
心理的リアクタンスを自分自身が回避するために重要なのは、心理的リアクタンスがはたらいているということを認識した上で、相手の言葉の意図をしっかり考えることです。 相手の言葉に反発してしまった時、自分だって反発したくてしているわけではないでしょうし、相手も反発させるつもりで伝えたわけではないはずです。 心理的リアクタンスがはたらいていることを自覚した上で、相手の意図をしっかり汲み取って受け止めましょう。
心理的リアクタンスとうまく付き合っていこう
自分が発信者の時は相手の心の動きを読むのは大切ですが、こちらが逆に依頼や命令を受ける場合も自分の中の心理的リアクタンスの自覚が必要です。
心理的リアクタンスの効果やそれによる心の動きを意識しておくことによって、さまざまな人間関係や世の中にあふれかえっている広告などの情報にも振り回されることなく、適切な判断をくだすことが身についてきます。
自分の意見を相手に伝えたいときにも、無理に説得するのではなく、相手の自由を尊重したり、自身の心理的リアクタンスの動きも理解することによって、人生の波をよりうまく乗りこなしていきましょう。
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