代表性ヒューリスティックとは?様々な具体例で人の非合理性をわかりやすく解説

ビジネス心理

代表性ヒューリスティックとは、問題解決時に、典型的と思える事柄を過大評価する傾向にあるという法則です。

人の判断に影響を及ぼす代表性ヒューリスティックとは何なのか、どのようなことに気を付けなければならないかについてご紹介したいと思います。

代表性ヒューリスティックとは?

代表性ヒューリスティックとは、問題解決の際、代表的、典型的と思える事柄を重視し、判断材料に利用しがちであるという法則です。

ヒューリスティックとは?

ヒューリスティックとは、人が複雑な問題を解決するために、簡略化されたプロセスを経て答えを導き出すこと、またはその方法です。 つまり”複雑に考えるのではなく、なるべく簡単に答えを出すための方法” がヒューリスティックであるといえます。 代表性ヒューリスティックとはヒューリスティック(=なるべく簡単に答えを出すための方法)の中でも、”代表的、典型的な経験則に基づいて答えを出す方法”と言えます。

今回は心理学の用語として紹介していますが、”ヒューリスティック”という言葉は、心理学に限定した用語ではなく、計算機科学の分野でも使われる用語です。 計算機科学の分野でどのようにヒューリスティックが用いられているかというと、アンチウィルスソフトでコンピュータウィルスを検知する際に、過去のアンチウィルスの振る舞いと比較し、似たものをウィルスとして検知するといったプログラムに使用されています。

代表性ヒューリスティックの具体例

さて、それでは実際に代表性ヒューリスティックにはどのようなものがあるのか、その具体例を書いてみます。 皆さんも一つ一つの例を一緒に考えてみてください。

リンダ問題

代表性ヒューリスティックの具体例として有名なものに『リンダ問題』というものがあります。 彼女に関する文章を読んで、彼女についてもっともありそうな選択肢をチェックしてください。 リンダは31歳、独身で、意見を率直に言い、また非常に聡明です。彼女は哲学を専攻していました。学生時代、彼女は差別や社会正義の問題に深く関心を持ち、反核デモにも参加していました。 1.リンダは銀行の出納係である。 2.リンダは銀行の出納係であり、フェミニスト運動の活動家である。

さて、あなたは1、2のどちらを選んだでしょうか。 選択肢の前の文章を読んだ回答者は、より詳細な記述のある2を選びがちです。 ですが、ここで冷静に考えてください。 1の選択肢は2の選択肢を含んでいます。 なので、論理的に考えると正解する確率が高いのは選択肢1の方です。 逆に考えると、選択肢2が正解である時、選択肢1は必ず正解になります。

血液型判断のヒューリスティック

他人の血液型を当てるといった場合も代表性ヒューリスティックが働いていることがあります。 例えば、個性的だといわれる友人の血液型を当てる際、その人の血液型が 1.A型か 2.B型か と聞かれると、「B型=個性的」ということがよく言われるため、B型を選びがちです。日本においてA型は約40%、約B型は20%であるため、本当は確率的にはA型の方が高いのですが、典型的なものに基づいて判断してしまうため、「個性的=B型だ」となってしまうのです。

コインの裏表のヒューリスティック

今度は、コインを4回投げたときのことをイメージしてください。 下記の選択肢1と2のうちどちらが出やすいと思いますか。 1.表・裏・表・裏 2.表・表・表・表   感覚としては選択肢1の方が出やすいのではないかと思いがちです。しかし実際は、表が出る確率も裏が出る確率もそれぞれ1/2であるため、どちらの確率も同じになります。

典型的見た目のヒューリスティック

次は、いかに人が外見的特徴によって判断を下しているかという例です。 ある器物破損事件が発生したとき、その現場に2人の人物がいたとします。 一人はサラリーマン風の人、もう一人はヤンキー風の人であったとき、あなたはどちらが器物破損事件の犯人だと思うでしょうか。 おそらく、ヤンキー風の人が犯人であると考える人が多いのではないでしょうか。 しかしながら、世の中サラリーマン風の人が圧倒的多数を占めるわけで、確率的にはサラリーマン風の人が犯人である可能性が高いにも関わらず、その特徴から、ヤンキー風の人が犯人であるという判断を下してしまうのです。

色とヒューリスティック

先に挙げたような確率や人間的特徴以外にも、無意識に働いている代表性ヒューリスティックがあります。 例えば、赤い粉末を見た際、「この粉末は辛いのでは?」と考えてしまうのは、トウガラシや一味の粉を経験的に知っているからです。 もちろん赤い粉がすべて辛いわけではありません。 パプリカの粉なんかは赤いですが、全く辛くありません。 しかし、私たちの中で代表的なもの(トウガラシや一味)が辛いので、「赤い粉=辛いに違いない」となってしまうのです。

代表性ヒューリスティックは合理性を失わせる

上記の代表性ヒューリスティックの具体例を読んで、どう思われたでしょうか。 冷静に考えれば誤った判断、ある種の”決めつけ”、”思い込み”にも近いものであることに気づきそうなものなのですが、逆にいかに人間が合理的とは言えない判断をしているかがお分かりいただけたのではないでしょうか。 それでは、なぜ人間はこのように合理的とは言えない判断を下してしまうのでしょうか。

それは、我々の脳が楽をしたがる癖を持っているからです。 我々の脳は意思決定を行う際、より論理的に答えを出すのは時間がかかるので、経験則によってバイアス(重みづけ)を行い、大雑把でいいから正しいであろう判断を下したがるのです。 しかし、我々の経験則からの予測なんて大したものではありません。 所詮我々は短い人生のほんの一握りの経験をさも常識のように思っているに過ぎないのです。 そのため、大体確からしいと思って出した答えが実際とは異なるということが起こってしまうのです。

代表性ヒューリスティックを回避する方法

では、代表性ヒューリスティックを回避するにはどうすれば良いのでしょうか。 それは、「自分の経験則(常識)に頼りすぎず、一歩立ち止まって考える癖をつけること」です。 先ほど書いた通り、人間の脳は楽をしたがるものです。 無意識のうちに、経験則から誤った判断を下しがちです。 しかし、そのたびに一歩立ち止まり、「本当にこの判断は正しいのか、正しいといえる”根拠”はなんだ。」と考えることにより、代表性ヒューリスティックを回避できます。 また、経験則を知識で補うことによって、代表性ヒューリスティックを回避することが可能です。 先の血液型の例は、日本人の血液型の割合を知っていれば、おかしな点に気づくことができますし、赤い粉の例でも、パプリカが辛くないということを知っていれば、「赤い粉=辛い」というのは誤りであるということがわかるはずです。

関連するヒューリスティック・心理学用語

今回は代表性ヒューリスティックを取り上げて紹介しましたが、そのほかにも関連するヒューリスティックはいろいろあります。

利用可能性ヒューリスティック

利用可能性ヒューリスティックとは、すぐに思い出せるもの、記憶に残っている事柄から状況判断を行ってしまうという法則です。

コンビニの数と歯科医院の数

例えば、日本全国でコンビニと歯科医院、どちらの数が多いかと聞かれた場合、多くの人がコンビニが多いと答えるのではないでしょうか。 しかし、実際には歯科医院の方がコンビニよりも1.5倍多いといわれています。 コンビニは目につきやすいところに立っていますし、似たような色形をしているので、記憶に残りやすいのです。 対して、外見が千差万別な歯科医院は記憶に残りにくいため、実際の多さを誤認してしうのです。

係留と調整のヒューリスティック

係留と調整のヒューリスティックとは、最初に目にした情報を基準にし、物事を判断してしまうという法則です。

バーゲンセールの服

例えば、もともと20,000円で売られていた服がバーゲンセールで、10,000円で売られていたとしましょう、あなたはどう思うでしょうか。 多くの人が、『もともと高価であったものが、安くなって得をした。』と判断するのではないでしょうか。 もともとの価値が20,000円であったかどうかはわからないにもかかわらずです。

ヒューリスティックとうまく付き合おう

ここまで、ずっと代表性ヒューリスティックを中心に、ヒューリスティックについて、その危険性を述べてきました。 しかしながら、「ヒューリスティック=ネガティブなもの」ではないのです。 ヒューリスティックはあくまでも、問題解決のプロセスの一つです。 経験則から判断するため、思考時間が短いが、正確性が落ちるのが「ヒューリスティック」 逆に正確性を求めて思考するのには、時間がかかります。

どちらが良い、悪いではなく、一長一短なのです。 逆に思考時間が短いというのは、ヒューリスティックの強みでもあるわけです。 しかし、正確性に欠けるのが厄介なところです。 我々は絶えず、「ヒューリスティックによって導き出された答えは正確なのか、経験則からくる思い込みではないのか」とダブルチェックする必要があるのです。

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