学習性無力感とは?学習性無力感の具体例や原因、回避法と克服法を解説

自己啓発

逃げられないストレス、回避できないストレスが続くと、人は「何をやっても無駄だな」と、学習性無力感を感じます。

もしかしたら、あなたはもうすでに学習性無力感かもしれません。学習性無力感の特徴や原因を知って、回避法と克服法を身につけましょう。

「何をしても無駄だ」と感じたことはありますか?

あなたは人生において「何をしても無駄だ」と感じたことがありますか?人はストレスがかかると、それを回避しようとしたり解消しようとしたりして、自分を守ろうとします。でもその方法がどれもうまくいかず、ストレスがかかり続けると、「何をしても無駄だ」と感じるようになります。 学習性無力感に陥ってしまった時、それは人生の大きな危機状態です。学習性無力感の特徴や原因を知り、その状況の回避法や克服法を身につけましょう。学習性無力感はほっておくと大変なことになってしまいます。早めの対処を心掛けましょう。

学習性無力感とは?

そもそも学習性無力感とはなんでしょうか? 読んで字のごとく、学習したことによって感じた無力感のことです。ストレス負荷がかかった時に、人は逃れる努力をします。例えば、仕事で作った書類に対して上司から「これじゃあダメだ」と言われたとしましょう。 まずはどこがいけないのか考えて直す努力をすると思います。でもどこを直しても「ダメだ」の一言。またはその通り直したのに「こうじゃない」とこの前とは違うことを言われてしまった。そんなことを繰り返しているうちに、人は少しずつ「何をしても無駄だな」と感じるようになります。

そうやってストレス状況から逃れる努力を重ねているにも関わらず、一向に逃れられない状況になってくると人は、やっても無駄だという気持ちを学習してしまうのです。学習性無力感というのは、気づいたときにははまっているものなのです。 学習性無力感というと、それほど深刻なように感じませんが、実際はうつ状態と同じ精神状態に陥ってしまっています。それほど、ストレスがうまく回避できないということは強いストレスなのです。

学習性無力感の実験

学習性無力感は、これまでに複数の心理学者の実験によって実証されています。その中でも有名なのが、アメリカのセリグマンとマイヤーによる犬の実験です。 犬をAとBの2群に分けます。Aは「電気が流れているが、ボタンを押せば止まる部屋」に入れBは「電気が流れていて、何をしても止まらない部屋」に入れました。Aの犬は試行錯誤の末、ボタンを押すことで回避できることを覚え、その後は、電気が流れると、ボタンを押しました。 Bの犬は、何をしても電気が止まらないことを試行錯誤の末学習し、その後は電気が流れても丸まってジッとしているだけになってしまいました。Bの犬は回避できない電気というストレスに学習性無力感を感じていたのです。

この実験には続きがあります。今度は低い壁を越えて隣の部屋に入れば電気を回避できる部屋に、それぞれAの犬とBの犬を入れます。今度はどちらも回避が出来る状況です。当然、Aの犬は再び学習して、壁を飛び越えて回避することに成功。 ところが先ほど学習性無力感を感じたBの犬は、試行錯誤すらせずにその場で電気を受け続けたのです。一度学習性無力感を感じてしまうと、うつ状態となり、「何をしても無駄」という気持ちが変わらないままとなってしまうのです。 セリグマンはその後、人間にこれを応用。大きな音というストレスに変え、実験したところ、犬と同様の結果が得られたのです。つまり人も回避できないストレスが加わりつづけると、学習性無力感を感じてしまうのです。

学習性無力感に陥った人の特徴5個

学習性無力感に陥った時、たいていの場合、人は自分ではなかなか気が付きません。学習性無力感に陥った時に出る特徴を知っていることで、万が一自分が陥った時や、大切な人が陥っている時に、いち早く気が付くことができます。 学習性無力感は、出来るだけ早めに気が付くことが大切なのです。

「何をやっても無駄」と言う

学習性無力感は、「何をやっても無駄」という言葉を会話の中で使います。学習性無力感に陥っている人は、どんなアドバイスを聞いても動き出せなくなっています。 つまり、周りが見かねて「こうしてみたら?」「こういう方法はどうかな?」とアドバイスをくれても「何やっても無駄」「意味がない」「どうせまたダメと言われるよ」と、否定的なことばかり言って動こうとしません。 学習性無力感に陥っているということは、その人なりにやれることをやってきたのです。努力を重ねてきているのです。そこへ人からアドバイスが与えられたとしても、もうそれを実行するほどの力が残っていない状態なのです。

無表情

学習性無力感に陥っている人は、表情がほとんどなくなってしまっています。無表情と言えるような状態です。周りが笑っていても、うまく笑えず、無理して笑おうとしたあとでため息をついたりします。 怒りや悲しみもほとんど感じていないような、硬い表情になってしまっているのは、学習性無力感に陥っている特徴です。もしあなた自身が、好きなバラエティー番組を見ていてもため息しか出なかったり、あなたの大事な人が、いつもなら笑う場面で笑えていない時は注意です。

すべてのやる気を失っている

学習性無力感に陥っている人は、すべてのやる気を失っています。例えば仕事がきっかけで学習性無力感を感じたとしましょう。でも、学習性無力感は仕事だけではなくプライベートにも影響を及ぼしてきます。 すると何をしても楽しくない、大好きだったはずの習い事にも行く気が出ない、趣味もやる気が出ない、なんていう状況になってしまうのです。「何をやっても無駄」という気持ちが人生のすべてを覆ってしまっているような状態が学習性無力感に陥っている人の特徴です。

動きが緩慢になる

学習性無力感に陥っている人は、動きも緩慢になってしまいます。以前は何事も出際よくテキパキこなしていた人が、動きが緩慢で、何もかも非常に時間がかかってしまうようになります。朝起きてからの準備の間に、ため息をついたり、ぼんやりする時間が入ってきます。 テキパキ動こうにも、頭の中で段取りをして動くこともできません。電車に間に合わなそうだと思ったら、通常なら走りますが、学習性無力感に陥っている人は、重い足取りで駅の階段もゆっくりとしか上がれません。「まあいいや」としか思えなくなるのです。

暗いトンネルの中にいる気分になる

学習性無力感に陥っている人は、「暗いトンネルの中にいる気分」と言います。言葉は違えども、先も進むべき方向も何も見えないような状況にいるというようなことを言いがちになります。 周りからすれば、まだ解決方法は色々あるし、道が断たれて、先が真っ暗…には見えません。でも本人からすると、自分がこれからどこに向かっていけばいいのか、もわかりません。それにこの先に明るい未来が控えているとも思えなくなってしまっています。 今の状況を変えようとする気持ちも、今の状況が変わるというポジティブな考えも、今自分がどうしたいのかすら考えられなくなっています。それは学習性無力感に陥っているということなのです。

学習性無力感の具体例5個

では、どういったケースが、学習性無力感といわれる状態なのでしょうか。場面ごとに具体例を挙げてみましょう。

学校でのいじめ

学校内におけるいじめというのは、学習性無力感に陥る状況のひとつです。いじめは、日々存在を根底から否定されるような言葉かけや行為を繰り返し与え続けられます。非常にストレスフルな状況です。 最初のうちは、いじめの状態から脱却すべく被害者も努力をします。先生や友達に相談して見たり、親に学校に行きたくないとお願いしてみたり。いじめアンケートに書いてみたり、何かしらのアクションを起こします。 でも「気のせい」「強くなれ」「頑張れ」などの声を掛けられ、なんの解決もしないまま同じような日々を過ごすことで、少しずつ「誰かに話ても、どうせ無駄」「抵抗しても無駄」「助けてって言っても無駄」と思うようになるのです。これがいじめによる学習性無力感です。

学校におけるえこひいき

学校において、えこひいきというのも学習性無力感を引き起こします。Aさんは先生のお気に入り。部活でも、さして上手ではないのに、なぜかレギュラーに選ばれています。それによって、Aさんより上手なのに、いつも何かしらの理由をつけてBさんがレギュラーに入れずにいます。 理由は毎回納得のいかないものです。Aさん以上に頑張って練習し、技術も明らかに上のBさん。でも先生はお気に入りのAさんをレギュラーにします。Bさんは、当初怒りをあらわにし、チームメイトに相談したり親に相談したりもしていました。 ですが、それも解決にはつながらず、Bさんは「どうせ頑張っても仕方ないでしょ」「どうせ何したって選ばれるのはAさんだよ」と練習に来なくなってしまいました。学校も休みがちになり、最近は家に引きこもっているという噂です。

職場におけるパワハラ

職場における執拗なパワハラは、学習性無力感に陥るリスクをはらんでいます。C課長は非常に威圧的な上司として有名です。中でもDさんには当たりが強いです。企画を出しても、「こんなんでよく出せるな」と突き返されます。 直しをして出しても目の前で破られたり、そのままゴミ箱に入れられたりします。「どこがダメでしょうか?」とDさんも聞いてみましたが、「そんなもんは自分で考えろ」と一言。他の同僚に見てもらっても、どこがダメなのか誰にもわかりません。 Dさんは、必死に頑張って企画を練りましたが、最終的に「お前は無能だ」と言われ、他の人の企画が通ることとなりました。そのころからDさんは、企画を出すよう言われても、何も頭に浮かばなくなってしまいました。毎日朝会社に行くことも、体が重く感じます。

Dさんの頭には常に「お前は無能だ」と言われた言葉がリフレインしています。そのせいでDさんは普段問題なくこなせていた仕事さえもうまくできなくなってしまいました。

家庭内のDV

家庭内におけるDVも学習性無力感に陥らせる原因となります。毎日お酒を飲んでは暴れる夫。妻は夫にお酒を飲ませないよう努力をします。でもだんだんとDVはエスカレートし、お酒を隠したりすると殴られる様になってしまいました。 妻は逃げようとしますが、たいていは途中でつかまってしまい、殴ったりけられたりしてしまいます。「やめて!」と叫んで抵抗を試みますが、かないません。ある時、妻は抵抗してもどうせ殴られる、そう感じるようになりました。 それ以来、「酒」と言われたら、黙ってお酒を出し、殴られそうになっても無抵抗のまま殴られ続けるようになっていったのです。見かねた知人が「逃げたほうがいい」「警察に行こう」と言ってくれましたが、妻は無表情で「あの人が余計に怒るから」と聞き入れません。

近所の騒音問題

騒音おばさんというのも一時ニュースで話題となっていました。でもそういった近所の騒音による問題も学習性無力感に陥らせるのです。 あるマンションに住むEさん。Eさんは3か月の赤ちゃんのお母さんです。寝かせるのも大変で、抱っこで歩き回って、なんとか寝てくれたと布団に置き、ホッと一息ついたところで、その騒音は始まります。 お隣のFさんは、ちょうど赤ちゃんが寝ついたあとに、いつも大音量で音楽をかけてダンスの練習を始めます。窓も全開で、Eさんのおうちにもものすごい音量で聞こえてきます。その音で赤ちゃんが目覚めてしまうのが常でした。

Eさんはご主人とも相談し、何度かFさんに音を下げてもらえないかとお願いしましたが、聞き入れてもらえないどころか、言うたびに音を大きくされているようでした。管理人さんにも伝えましたが、管理人さんから言っても同様です。最近では最大音量で鳴らしているようでした。 最初の頃は怒りを感じたり悲しくなったりしていたEさんでしたが、解決方法が見つかりません。Eさん自身も家で横になりたい時間帯です。Eさんは徐々に当初感じていたような感情もわかなくなり、ご主人に愚痴を言うこともなくなりました。 毎日表情が硬く、ご近所さんが挨拶しても、返答もないような状態です。

学習性無力感が起こる理由・原因は?

学習性無力感は、いったい何が理由や原因となって起こっていくものなのでしょうか?

努力しても回避できない状況

学習性無力感は、やはり努力しても回避できない状況が一番起きる理由となります。人は通常ストレスがかかると回避しようと努力をします。対処能力には個人差がありますが、誰もが、まずは自分でなんとかしようとするものなのです。 でも人は努力をしても変わらないことに対して無力感を感じます。努力をすればするほど、そのあとに感じる学習性無力感は強固なものとなります。努力をしても回避できないとなると、人は努力しても無駄であると学習するのです。

否定されることが立て続きすぎている

学習性無力感に陥る時というのは、あまりにも否定されることが立て続きすぎたというのも原因となります。人はストレスがかかった時に、ある程度なんとかしようと努力をすると言いました。でもそのストレス負荷が立て続きすぎると、努力をする間もないままに次のストレスがのしかかります。 もし障害物リレーに出た時に、行きつぐ暇もなく障害物があると、途中でやる気を失いませんか?「めんどくさいな」「ゴールできないんじゃないか」と感じると思います。それと同じで、あまりにもストレスが立て続くと、人は「どうでもいいや」と感じるようになります。 こうやって「お前はダメだな」という苦言が続くことで、学習性無力感に陥ってしまうのです。

「いい子」だった子ども時代

内面にも原因となることがある場合もあります。「いい子」だった子ども時代を過ごしてきた人は、学習性無力症に陥りやすいです。「いい子」というのは「大人にとっていい子」という意味です。そういった人というのは、上司や周りの人間の期待に応えたいという気持ちが強いのです。 そうなると、上司からパワハラを受けた時に、「いい子」と認めてもらえない自分がひどくダメな人間に思えてくるのです。また、いじめやDVも同様です。周りから、パートナーから「いい子」と認めてもらえないことへの葛藤が通常より強くなります。 「いい子」ではない、でも「いい子」に戻る方法がわからないとなった時に、学習性無力感に陥りやすくなるというのは、よくあることなのです。実際、学習性無料感に陥る人は、過去「いい子」であった人が多いのも事実です。

学習性無力感の回避方法4個

学習性無力感に陥ると、自分でも気が付くことができません。また人の助けの手があっても動けない状態になってしまいます。早めの回避で、危機的状況に陥ることを避けましょう。

今辛いことを書き出してみる

学習性無力感に陥ってしまうと、何が辛くてそうなったのかなど客観視もできなくなってしまいます。ただただ「何しても無駄」という気持ちにさいなまれてしまうのです。そうなる前に、今辛いことを書き出してみましょう。 仕事と思い浮かんだのであれば、仕事の何が辛いかもう少し考えましょう。どの案件で、どういったことが今一番辛いのか、それを明確化することで、それが本当に対処可能なことなのかを検討できます。もしかしたら自分で対処しようとしても出来ないようなことかもしれません。 例えば上司は妻に浮気がバレて家庭が離婚の危機。それによってイライラしてあなたに八つ当たりをしている…なんてこともあるかもしれません。そんなことがわかってもなんの解決にもならないように感じるかもしれません。

でも、それを知っているのと知らないのとでは、「お前なんか無能だ」と言われたときの気持ちのありようが少し変わってきます。「本当に無能なんだろう」と考えるか「今日もイラついてるんだな」と考えるか。 だから、もし努力してもうまくいかない、これはまずいという時は、書き出してみることがおすすめです。

カウンセリングに行ってみる

こういう時に使えるのがカウンセリングです。別にそんなに心は病んでいないと思うかもしれません。でも心が病んでしまってからでは、元の状態に戻すのに時間と労力がかかります。今の状態だからこそ、カウンセリングが有効に働くのです。 仕事のことや学校の事、家庭の事、あなたが努力してもうまくいっていないことを話してみましょう。なんの関係もない他人だからこそ話が出来ることもあると思います。話すことのメリットは、自分の考えに気がついたり、状況を客観視できるということです。 ぜひ学習性無力感に陥ってしまう前に、カウンセリングに行ってみましょう。

なんとかしてくれる人を探す

学習性無力感に陥る前に、何とかしてくれる人を探しましょう。きっと頑張って誰かに相談をしたと思います。でも動いてくれなかった、何も変わらなかった、そんな時に「何をやっても無駄」と感じると思います。 でもそこで諦めないで、もっと広く探してみましょう。きっとあなたの味方になってくれる人が必ずいます。どうしても人に相談するというのは勇気がいることです。きっとかなりの勇気を出して人に話したんでしょう。 それで変わらなかったとなると心が折れて当然です。でもここでひと踏ん張り。もっと力になってくれる人はいるはずです。

一回努力をやめてみる

学習性無力感に陥るのは、ストレス回避のための努力を続けたせいです。きっと何をやってもダメだったのでしょう。そういう時は、何をやっても割とうまくいかないことが多いのです。なぜかというと、うまくいかないと感じるごとに人は焦ります。視野も狭まります。 するとどんどん本来の力が発揮できなくなるのです。追い詰められた状態です。そうなると学習性無力感に陥る状態が出来上がってしまいます。だからこそ、ここは思い切って一回やめてみるというのは有効です。 そこで大事なのは、ただ努力をやめるだけではいけないということです。心をしっかりと休めて、出来るだけ今の状況を客観視しましょう。そして手助けしてくれそうな人を探しましょう。そのために一回努力をやめるのです。

学習性無力感に陥ると危険

学習性無力感がいかに危険な心の状態なのかわかっていただけましたか?人は物事を考えられなくなり、視野が狭まり「何をやっても無駄」と感じた後、「死」が頭をよぎったりするようになります。 そうなってしまうと、そこから抜け出すのが大変になってしまうのです。だからこそ、早めに気づいて対処することが必要なのです。もしあなたがそうなりそうなのであれば、まだ今なら間に合います。あなたの努力を味方を探すことや客観視することに投じましょう。 もしあなたの大切な人が陥りそうなのであれば、頑張ってお節介でも手を差し伸べ続けましょう。それが必ず役に立ちます。学習性無力感に陥る前に、出来ること、たくさんあります。陥る前にブレーキを!

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